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84話 知っているのは二人

last update publish date: 2026-09-10 11:02:29

(だから優しいんだわ。私を産んだせいでお母様が死んで私が憎いはずなのに。みんな、私に同情しているから優しいのよ)

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 誰に対して謝罪をしているのかオリヴィア自身分からなかった。オリヴィアを産んだ|母親《サラ》か、彼女の|双子の姉《ジェシカ》か、二人の|兄《ウィリアム》か、|騎士《アン》か、可愛がっていた|黒い犬《ワンちゃん》か、|夫《イアン》か――……。

「わたしのせいで、おかあさっ――」

 そう叫んだ唇が思い切り塞がれた──が、派手にガチンと歯が当たってオリヴィアは顔を歪めた。痛みのお陰で震えが止まっていた。

 目の前に口元を押さえて痛みに悶えるイアンがいた。

「キスをして落ち着かせようと思ったんだ。ただ俺が下手すぎて上手く唇に当たらなかった」

 モゴモゴと謝罪を述べるイアンは、顔が真っ赤だ。手の甲にまで伝染したかのようで真っ赤に染まっていた。

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    (だから優しいんだわ。私を産んだせいでお母様が死んで私が憎いはずなのに。みんな、私に同情しているから優しいのよ)「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」 誰に対して謝罪をしているのかオリヴィア自身分からなかった。オリヴィアを産んだ|母親《サラ》か、彼女の|双子の姉《ジェシカ》か、二人の|兄《ウィリアム》か、|騎士《アン》か、可愛がっていた|黒い犬《ワンちゃん》か、|夫《イアン》か――……。「わたしのせいで、おかあさっ――」 そう叫んだ唇が思い切り塞がれた──が、派手にガチンと歯が当たってオリヴィアは顔を歪めた。痛みのお陰で震えが止まっていた。 目の前に口元を押さえて痛みに悶えるイアンがいた。 「キスをして落ち着かせようと思ったんだ。ただ俺が下手すぎて上手く唇に当たらなかった」 モゴモゴと謝罪を述べるイアンは、顔が真っ赤だ。手の甲にまで伝染したかのようで真っ赤に染まっていた。「最初のキスでも歯が当たってしまった。知識としては知っていたが、実践となると難しいな」  首を傾げてイアンを見ていたら彼はハッとしてオリヴィアの顎をクイっと持ち上げた。 顎を持ち上げて人差し指と中指で下唇を引っ張る。開いたオリヴィアの口内をイアンは目を左右に動かして、口の中を覗き込んだ。「歯を折ったりしてないな? 切ったりしてないか?」「あー、う、う」「二回も当てたからな……」 コクコクと頷いても、自分の目で確かめないと安心しないのかオリヴィアの顔を左右に動かして、それからクルっと顔で円を描く。隅々までチェックし終わって、イアンはオリヴィアの顎から手を離した。「どこも怪我してないな……良かった」「…………」「勢いがあり過ぎて駄目だったな……次はもう少し落ち着いてしよう」 すまないと謝るイアンを見

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